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デザインの国際的情報と星の王子様Ⅱ

デザインの国際的情報と星の王子様Ⅱ

1994年 平成六年 四月 講話 河原 碧子

☆それでは国際化の一環であり「ヨーロッパ統一EC」の通貨を例にとって「デザインの果す役割」に「一つの国家」がどう考えているかについて検証してみましょう。

☆EC統合の象徴として新しく発行された通貨である「ECU」(Europian Currency Unit)の金貨の表面に「カール大帝」の肖像が刻まれています。イギリスやフランス・イタリアが、カール大帝(シャルルマーニュ)を尊敬して、EC統合の通貨に取り上げた理由は、カール大帝が西ヨーロッパ王国を建てなければ現在のキリスト教国の実現はなく西ヨーロッパは、イスラム教徒の奴隷になっていただろうと云われているからです。

ここに一枚の紙幣があります。これはEC統一後のフランスの紙幣でここに印刷されているのは、フランスのサン=テグジュペリの「星の王子様」です。この星の王子様の物語は皆さんご存じの通りです。

作者のサン=テグジュペリ(1900―1944)はフランスの作家ですが実は飛行士でした。彼の生まれたフランスのフランシュ・コンテにあるジュラ山脈の麓には、18世紀末から19世紀の初めに人道主義が発祥し後に社会主義に発展した地であるのもこの様な物語が生まれた事と何かの因縁があるかも知れません。

この地方は空気や水のせいか発明家の国として有名で多くの天才が生まれています。サン=テグジュペリは空を飛ぶ事に情熱を燃やし続け「南方飛行」「夜間飛行」「人間の土地」などの作品で賞賛を得ましたが1940年にはアメリカに亡命しました。しかし残念な事にサン=テグジュペリは1944年フランス軍の飛行中隊長として飛行中、コルシカ島沖合で行方不明になりました。

☆「星の王子さま」は、1943年にニューヨークで出版されましたが、フランスではサン=テグジュペリが亡くなって三年たって1946年に本になりました。

☆この物語は、サハラ砂漠のまん中に不時着した飛行士が不思議な子どもに出会った処から始まります。「本当のこと」しか知りたがらない男の子が出会った子供「星の王子様」でした。子供の心や、愛について深く考えさせられる美しく楽しい絵本です。

この本は、サン=テグジュペリの親友レオン・ウェルトに捧げたものですが、その中で彼は子供だった頃のレオン・ウェルトに対してこのように云っています。「わたしはこの本をある大人の人に捧げたのですが子供達にはすまないと思っているのです。でも、それにはちゃんと言い訳があります。その大人の人は私にとって、第一に大切な親友だからです。

そしてもう一つ言い訳があります。と云うのはその大人の人は子供の本でも何でも判る人です。いや、もう一つ言い訳があります。その大人の人は今フランスに住んでいて、ひもじい思いや寒い思いをしているのです。だからどうしても慰めてあげなければならない人なのです。こんな言い訳をしてもまだ足りないのなら、その大人の人も昔は子供だったのですから、その子供にこの本を捧げたいと思ったのです。大人は誰でも始めは子供だったのですが、その事を忘れずにいる大人はいくらもいません。そこで私は私の献辞をこう書き改めます。」こどもだったころのレオン・ウェルトに

☆ それでは、まず、物語のあらすじを少し、お話ししておきます。

星の王子様の小さな 小さな星には一本の珍しい花がありました。王子様は花の頼みを聞いてやり、大切に育てていましたが花は王子様が素直な事をいい事に王子様を困らせていました。

ある日、王子様は、そんな花を残して、星を後に旅に出ます。

色々な星で、色々な大人達に出会いました。この物語の作者でもある一人の飛行士、サン・デグジュペリとの出会いの場でもある地球に訪れた時のことです。この世にたった一本しかない珍しい花を持っているつもりだった王子様は、ごく普通のバラの花を一本持っている切りだったという事に気付きました。そして、星に残してきたバラの事を思い出します。

☆この「王子様」が、統一ヨーロッパの新しい紙幣「エキュ」の救いの神、又はフランス大蔵省の産業振興政策の一環になろうとしているのです。この物語を取り上げて通貨に迄した、フランスの文化の奥深さに並々ならぬ国家としての格調を考えさせられます。

飛行士だった、サン=テグジュペリの宇宙観を、ヨーロッパ統一や地球同一観に見立てた事は、フランスとしても、この際、新紙幣に用いるのに最も適切な選択であると思ったのでしょう。

☆「国際化」といえば、ヨーロッパ通貨単位 E.C.U.(EuropeanCurrency Unit)、フランスは「エキュ紙幣」印刷にふさわしい技術を持っている国としての名乗りを上げる為の下準備として☆1993年10月20日フランスで発行された新50フラン札に「星の王子様」の作者である「サン=テグジュペリ」の肖像を図案にして印刷しました。そして偽札防止の為の数々の仕掛を新技術を使って印刷しています。

☆公表されているものだけでも、銀色の断線帯はレーザー複写でもコピー出来ません。☆ウワバミ(蛇)がゾウを飲みこんでいる絵は角度によって藍色から緑色に変わる変色インクを使用しています・そして、安全対策用には糸が織り込まれています。

☆ 「星の王子様」の衣装は、表が緑色の上着と白のズボンで、裏から見れば、白の上着と緑のズボンに変ります。しかも、紙幣を透かせば、衣替えをしたように上下とも緑に見えるという特殊印刷が施してあります。

8本の青い線はアルファベットの文字を並べて「星の王子様」の一節が、印刷してあります。「ヒツジの絵をかいて」という王子様の望み通り白地に光沢のある白インクで「ヒツジ」が印刷されてあります。

☆これは昼光色では、はっきり見えないのですが紫外線に当てると、緑色に変化するというインクを使用しています。これ等の技術は1992年に「画家モーリス・カンタン・ド・ラトゥールの肖像」の50フラン札の偽札3000万フラン(日本円で約6億円)のうちにコピー機による複製があったので、それをどうやって防ぐかとフランス大蔵省とデザイナーと技術者が3年間に渉って秘策を練った結果です。これは、フランス大蔵省の自衛手段であると同時に、産業振興政策の一環としてヨーロッパの統一紙幣エキュ印刷に最もふさわしい技術を持っている国家としての下準備でもあり、PRでもあったのです。

☆日本でも聖徳太子が福沢諭吉に伊藤博文が夏目漱石に変りました。
☆フランスでもサン=テグジュペリに続いて、100フランはエッフェルに、200フランはリュミエール兄弟に、500フランは物理学者のキュリー夫妻と、庶民好みの文化人、科学者が次々と新札に登場する予定です。

200フランのリュミエール兄弟は、映画カメラと映写機の発明者として有名です。兄のオギュスト、弟のルイスはフランスに多くの発明をもたらした天才で、発明家の国としても有名なフランシュ・コンテ地方に生まれた兄弟の名前をとったリュミエールというフランス語は、光・光線 電気の明かり・精神力・信仰の光・知恵知識・演劇、映画の照明・権威者・大家等の意味で使われているのを見ても、すごい天才であった事がわかります。

「ヨーロッパ統一直前のフランスの新札」のデザインはフォーマットも小型化して50フランは80×123ミリで(高額になるに従がって横幅を10ミリずつ増す)他のヨーロッパ諸国の紙幣に合わせたりして何はともあれ「新50フラン」に印刷された「星の王子さま」が統一ヨーロッパを命がけで守るという「文学的比喩」をデザインの原点に持って来たのでしょう。

子供から大人迄世界中で愛読されている名著「星の王子さま」を読んで見ることも興味のあることです。

皆さんが今後、デザインを仕事とする時この様に「受けとめる人が文化的にどう考えるか」という事も配慮して「創作や、表現」する様に心がけて下さい。
デザインを学ぶ最初の日のお話として星の王子様を取り上げ「デザインの国際化のエピソード」の一端をお話しました。

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