人間と環境との関係、内面と外面との調和
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人間と環境との関係、内面と外面との調和

人間と環境との関係、内面と外面との調和

1990年 平成二年 講話 河原 碧子

今日、皆さんとお会いして最初にお話したい事は色々ありますが先ずこれ迄にデザインはどう定義付けられて来たのかと申しますと人間の生活の中で「機能的で合理的なもの」「役立つもの」を「最もよい形」や
「色彩」で表現するものとして考えられてきました。
☆しかし、これ程、世の中に物があふれて来るとデザインすることが、唯「機能的」「合理的」で「役立つもの」を作るだけでは満足されなくなってきました。

☆物と情報の洪水で、疲れている現代人の「心と生活」をどう整理すればより快適なものに近づくだろうかが先決問題になってきました。
☆新しいものを次々と作っては壊し捨てて行くのではなく持続性のあるよい物を創造していかなければならないという事です。その為に物を作る側は、いわゆる見る「眼」を持たなければなりません。
☆良いものを見る眼があれば自然に良い物を「創る」事が出来ます。
☆デザインが芸術と異なるのは必ず「社会との関わり合い」がある事です。関わりがあると云う事の一つ一つの条件をよく考えた上で表現しなければならない点です。

☆これからのデザインを考える場合「現在もてはやされているもの」や「既成の概念の持つマンネリズム」を完全に打ち破る勇気がないと何の進歩も新鮮味もないでしょう。今迄に「無かったもの」や、「否定されてきた考えや表現」の中にも本当の新しさや真実があるかも知れないという考えも必要です。
☆これから次世代が必要とするものは何かは最先端の情報科学技術も予測する事は出来ません。
☆それは時代の進み方や人の心が、どう変わって行くかも分らないからです。これから益々複雑化して行く「社会の仕組みの変化の速さ」に中々ついていけないというのが現在の状態です。

☆デザインを志す人は少なくとも自分達が見つけ出した何かを示し提案する勇気と能力を持たなければなりません。「どうすればよいか」とりあえず「これまでなかったもの」を考えて見て「無駄なもの」「面白いもの」を形にして、スポットライトを当てて見るとよいでしょう。お菓子のネーミングを一例にとっても「ビックリマン・チョコ」とか「ワァワァワァ」とか何か訳のわからない様なネーミングのものがコーナーを埋めています。「遊び」という言葉で軽く見られてきた事が「遊び」ではなくなって、それが本当に必要な「デザインの核」にまでなって来ています。

歴史の中で「無駄なもの」といわれ「遊び」といわれて来たものが、人間生活を豊かにするデザインとなり、人を楽しませるための「大切な要素」になってきています。遊びやゆとりのあるデザインを生み出し表現する為の実技にこれから取りかかるわけですが、一本の線を画面の上にも心の上にも引くことから始まります。皆さんには基本となる一本の線は色々な発想や思考が生まれるきっかけになる事を知って欲しいのです。
日常の生活の中で「物」や「人間の歴史」や「文学」「哲学」を学び「考え」を得たりするために常に、丁寧に回りを観察する事を心掛けて欲しいと思います。そうすることで例えデザイナーの仕事につかない場合でも生活のどの様な場面の中にも工夫とセンスを生かした楽しい暮らしをする事が出来ます。

☆理想を描き夢に向かって一心に歩みつづけていても現実には、これでもか、これでもかと足を引っ張る様な出来事がいっぱいあります。こんな時は「どう考えるべきか」「どう行動したらよいのだろうか」という自分や社会に対する色々な疑問が起きてきます。
☆その様な時には狭い人間の社会の中だけで思い悩むのではなく自然界の現象の生み出す力が人間に与えている計り知れない影響力や感化力に目を向けて気持を大きく持ち問題の解決を考える事です。

☆皆さんが卒業までに与えられる課題の中にはこの「自然と人間社会との関わり合い」を考えながら「身近な生活の中で生じる問題の解決」や「自然の大切さ」を具体的にアピールする一つの方法として「自然にかえろう」というテーマのポスターを作ります。その時「人間が自然に帰る」という事の「意味」や「必要性」「方法」について真剣に考え、それを最もわかり易くビジュアルに表現するにはどうすればよいか自分も含めて見る人が理解し納得出来るかを試みます。

実際に、旅をしたり、自然を観察したり、「自然の材料」、例えば「海水で穴のあいた石」や「流木」や「貝殻」「葉っぱ」「風化した動物や魚の骨」等、つまらない名もないものにも意味を見つけ表現して喜びを感じたりするのも学生ならではの時間の使い方でしょう。そういう試行錯誤のうちに「人間と環境」との関係、「内面と外面」との調和に辿りつくような「作品」が生まれて行くのだと思います。

作品作りの過程で体験する積極的な考え方によって「人生観は明るい方向」に変り学ぶことへの意欲がどんどん湧いて来て一生、勉強を続け様と思う楽しみが湧いてきます。何度も云いますが長い間には行き詰まって、どうしようかと迷う事もあります。こんな時こそ皆さんの日頃の「心の鍛練」が物を云います。アイデアがもう湧いてこないのではないかという不安にかられても、それを乗り越え挑戦する事は、プロとして当然であると自覚することが皆さんにとっての条件です。そうは云っても常に自分の心はリラックス出来る様にコントロールして視野を広く「あれも」「これも」と楽しく思いを巡らしましょう。
「もの」を作る感覚は「問題意識」を持ちながら、毎日毎日生活していくうちに、だんだん研ぎすまされ培われていくものです。

☆「イラスト」を描いたり「文字」を選んだり「形」を考え制作する事もデザイナーの仕事ですが現代では技術的な事よりも☆企画やアイデアを出すという「頭脳労働」が求められています。
☆優れたイメージやコンセプト(概念)を展開して行くには、いつも頭の中に蓄積されている知識やアイデアの量が多ければ多い程いい訳です。仕事に就いた時「限られた条件の中」の「ほんのわずかの自己表現」が、大きな反応を示し良い結果が得られた時に、初めて学校で学んだことの喜びが感じられる事でしょう。
ここでの勉強は、社会や人生の根本に触れる問題を考えながら自分を表現出来る様になるので、どんな人にも「自分を生かすチャンス」があります。

この学校から巣立つ人が真面目に「物を見極め」「鋭い感覚」「素直な明るい感受性」を持ち、その作品が本当に人間の社会に良い影響を与えるものであって欲しいと願っています。
各自の「先天的才能」や「能力の差」はあって、それぞれが完成に近づく事に要する年月には較差があって当然です。
☆焦らずに自分のペースを見つけて、その根本には、「好きな仕事」
「好きな事」をしているという喜びの感情を維持しながら前に向かって進んで行く事が一番大事です。
最後迄、諦める事なく毎日を有意義に過ごす様にお祈りして皆さんをお迎えする言葉といたします。

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